挨拶状 ~社長・会長就任挨拶~
新社長就任にあたり(ご挨拶)

前川啓
(代表取締役社長)
~ ㈱前川工業 平成29新春 新社長就任にあたり ~
謹啓 新春の候 皆様におかれましては、日々ご清栄のこととお慶び申し上げます。
弊社、株式会社前川工業は、地元長崎の基幹産業である造船業(船舶造修業)を生業とし、昭和四十年の秋(9月)に産声を上げ、一昨年の平成27年(2015年)に「創業五十周年」という、大きな節目を迎えることが出来ました。これもひとえに、関係者の皆々様より温かいご支援、ご厚情を戴いてまいりましたお陰でありますこと、弊社を代表して心より感謝申し上げます。
そしてこの度、平成29年新春を迎えるにあたり、小職(前職;代表取締役専務)があらたに代表取締役社長として就任することとなりました。
昨今、世界的な海運の低迷、それに伴う「造船不況」という、業界ならびに弊社の事業環境が厳しさを増す最中での社長就任に「大きな重責」を感じております。しかし、直接指導を戴いた初代そして先代(第二代)社長の教え、そしてその意思を受け継ぎ、これまで同様「困難な局面」を乗り越え、次の世代に操業を引き継げるよう、一意専心、これまで以上に心血を注ぎ会社経営に勤しむ所存ですので、どうか先代同様変わらぬご指導を賜りますよう、宜しくお願い申し上げます。

さて、小職(私)が社業を引き継ぎ社長就任するこの“重要な節目”に、これから担って行くべき「伝統」あるいは「継続」というものについて、僭越ながら少々私見を述べてみたいと存じます。
事業経営は、よく「企業継続(going concern)」などと表現されますが、私が会社に入社し十数年と、まだ拙い経験ながら、会社・社業を守り継続していくことの困難さは身に染みて感じております。私は「歴史」が好きなのですが、世間一般にも「歴史に、そして先人に学べ」と言われます。しかし一方、その教訓として「歴史が教えてくれるのは、人類は一度も歴史に学んだことない、とういうこと(皮肉)だ」という哲学者の言葉が示す通り、世の中には先人たちが築き上げたものが引き継がれない場合が少なくないようです。それはある意味、何事にも影響されず、自らあらたなものをつくり出したい、という人間特有の欲求からかもしれません。それは“挑戦心”という新たなものを生み出す源泉であると同時に、ともすれば「人としての驕り」につながるのではないでしょうか。
「保守(Conservative)」の意味は、“維持し、改造すること”、時務に応じて国政をよく維持し改造してゆくこととし、自分の使命は、その保守党を国民に魅力ある政党にすることである、自分は悪を去ることにおいてはラディカル(急進的)である」と、英国の有名な政治家が述べています。同様なことを、日本の思想家が、保守の真意とは「保業守成」。「業を保ち、成を守る」という言葉で「創業垂統」を承けるもの、という表現で述べています。わかりやすく言えば、国家や事業といった、先人が築き上げたものを継承し、改善、維持・発展させ、先人の成功を守り世代を超えて栄えていくことであり、そのためには、「大切で普遍的なもの」は守り、「時代に合わないもの、悪いもの」は絶えず変えていく必要がある、ということで、これがまさに文字通り「伝統」であり「継続(力)」なのだと感じております。
それでは、その「伝統」を学ぶべく、歴史をどこまで辿れば良いのか、という問いもなかなか難しいのですが、私達の制度や技術の“一つの集約”を見出せるのは「古代ローマ」。今日私どもが携わる、土木・建築・製造といった基本的技術あるいは法的制度等も、その大元(ルーツ)として行きつくのが「古代ローマ時代」であることが多いようです。
「全ての道はローマに通ず」という言葉が、決して現存する「物的街道」を意味するだけでなく、「精神的・文化的な街道」にも繋がっている。ただ、その原点・発祥は決してローマではなく、更に歴史を遡ることもできますが、しかし、集約・集大成し、その後の人類の歴史にその偉功を残しうる“かたち”にしたのが「ローマの凄さ・素晴らしさ」なのだと感じます。
そして興味を引くのが、1000年を超え繁栄した「大帝国ローマ」を築いた古代ローマ人は、他の民族と比べ“決して自分たちが優れてなどいない”、ということを、ローマ人自身認めていたことが様々な歴史資料から確認されている点です。
ローマ人は、「知力ではギリシャ人に、体力ではゲルマン・ガリア人に、技術力ではエトルリア人に、経済力ではフェニキュア(カルタゴ)人に劣る」と。ただ、最も広大かつ長期間に渡って国政を維持したのは紛れもなくローマであったのは、その謙虚さと、それゆえの絶え間ない研鑽があったことが「大きな理由の一つ」であるように思います。あるローマ皇帝の言葉に「何もより恐ろしいのは、人間の努力である」というものがありますが、そのことをよく理解し実践して繁栄したのがローマなのだと。そして、その時代を基礎とした様々な「遺産」が、今日もなお、私たちの生活や文化に息衝いていることに感慨深さを感じるのは、決して私だけではないと思います。
今日、私共(造船)業界の厳しい現実だけでなく、製造業全般の環境も「あらたな時代の潮流」を迎えています。「AI(人工知能)テクノロジー」の進展に伴う「第4次産業革命(Industry4.0)」の推進は、現在の人々の職を奪っていく、特にモノづくりの現場では、“多くの技術が機械化される”といわれています。
しかし、最初の技術は「人の叡智」によって生み出されたものです。そして、真に「良いモノ」とは、人の手を通じてつくられるからこそ、温かみ(体温)を帯び、感動を与えることが出来るのであり、だからこそ、機械による量産では決して真似のできない、「真に価値のあるモノ」を生み出すことが出来るのだと思います。ですから、決して我々の「仕事の価値」が完全に失われていくことはないはずですし、自らの仕事に「自信と誇り」を持っております。
私はこの十数年、仕事に関する多くこのことを現場の人々に学ばせて貰いました。特に、全く違う分野(非製造業)から来ているからかもしれませんが、本当に、日頃の現場技術者の仕事振りに、感服し、そして、誰よりも惚れ込んでいるのが、私(小職)自身であるという自信(自負)があります。
では、我々の仕事・技術職を後世に伝えていくこと(使命)とは何なのか。
我が国には古来より「生と死」というものを意識し、そして受入れるという「固有の感覚」があるといいます。それは「無常観」にもつながっているのでしょうが、昨今、よく話題に上った三重県「伊勢神宮」では、二十年毎に行われる「遷宮」によって本殿が建て替えられます。モノは「いつかは壊れ滅びる、だから建て直していく」ことで継続され、1000年を超える今日に、世界遺産「伊勢神宮」として、その姿(建造物)や信仰さえも存在している。
一見相反する「生産と破壊」ですが、生命には限りがあり、その「儚さ」ゆえ、一個人の存在、生命が潰えても、次世代の人々に受け継がれ引き継がれて行かなければならない。遷宮は、建物を建て替えることで、古きもの(建物)は喪失しても、その職人技術はずっと受け継がれることで今なお存在しうる。これは「伝統」を守り受け継ぐということの「一つの答え」を示唆するものであると感じます。
かたちあるモノは永遠ではない、しかし、技術があれば維持・再生は可能であり永きに渡り存在しうる。私も含め、人はいつか死にます。ですから、残るもの、残すべきものは、「精神であり技術」であると思っております。
弊社は、モノづくりの会社であり、その技術を提供し続けることが出来るよう、奢ることなく日々技術を磨き、そして後世に残していくことこそが使命だと考えております。
従いまして、先代の教えであります「人材を養うことは金銭(資本)以上の財産」であり「人の育英こそが弊社の大本」という初心を忘れることなく、そして、仕事により“結び付き(御縁)”のある関係者の皆様方への「感謝の念」を忘れることなく、これからも歩んでまいりたいと存じます。
そして、微力ではありますが、技術・産業の発展向上、そして地域社会に寄与、貢献出来ますよう日々努めてまいりますので、これからもどうか皆様の変わらぬご支援・ご厚情を賜りますよう、何卒よろしくお願い申し上げます。
末筆ですが、弊社を代表して、皆様の今後益々のご健勝とご多幸を祈念申し上げまして、社長就任の挨拶とさせて戴きます。
謹白
平成29年早春
株式会社前川工業
代表取締役社長 前川啓
株式会社前川工業 HP(ホームページ)開設にあたり

前川勝美
(取締役会長)
謹啓 春暖の候 皆様におかれましては、日々ご清祥のことと拝察申し上げます。
弊社は、地元の基幹産業である造船業(船舶造修業)を生業としている会社でございます。
昭和四十年の秋に、現会長(前社長)・取締役である兄夫婦とともに創業し、ただただ、実直に本業に勤しんでまいりました。
そして本年、早いもので”四十四度目の春”を迎えることが出来ましたことを感慨深く感じております。
これまで幾度となく、造船不況という「困難な局面」に遭遇してまいりました。
しかし、なんとかその危機的状況に耐え、乗り越えることが出来、そして今日の私どもがありますのも、ひとえに、日頃よりご贔屓戴いております、「(株)大島造船所」様を筆頭に、お取引先・仕事関係の皆様のご支援・ご厚情の賜物と、心より感謝申し上げる次第です。
今更ながらではございますが、少しでも弊社のことをご理解戴ければという思いから、この度、会社のHP(ホームページ)を開設致しましたので、皆様にご紹介申し上げます。
これからも初心を忘れず、皆様への感謝の念を忘れず、また、これまで地道な努力を積み重ね、直向きに進んで来た“航路の舵取り”を、これからも誤ることのなきよう、不器用ながらも真面目に仕事に取り組んでいく所存です。
小職のこれまでの経験から思いますことは、「人材を養うことは資本力以上の大いなる財産」という言葉の通り、“人の育英こそが弊社の大本”と考えております。
これからも人を、組織を、そしてそれらを取り巻く環境にも配慮し、大切にする会社を目指してまいります。
そして、微力ながらも、産業技術の向上に寄与し、地域社会に貢献出来ますよう、鋭意業務に邁進し、日々技術の向上に努めてまいりますので、これからもどうか皆様の変わらぬご支援・ご厚情を賜りますよう、何卒よろしくお願い申し上げます。
末筆ですが、皆様の今後益々のご健勝とご多幸を祈年申し上げまして、ご挨拶とさせて戴きます。
謹白
平成22年3月吉日
株式会社前川工業
代表取締役社長 前川勝美(現 取締役会長)
※平成22年3月に作成された文章です。
経営理念
企業使命
私たちは、「人の育英こそが会社の大本」という基本理念に則り、人材の育英に努め、常に安全を優先し、環境に配慮し、微力ながらも、会社一丸となって技術向上に邁進し、仕事や職務を通じ、産業技術の発展、地域社会への貢献に寄与してまいります。
企業理念
一、和心協働(わしんきょうどう)
⇒和の心を持って、同じ目的のために、皆が対等の立場で協力して共に働くこと
一、智行合一(ちぎょうごういつ)
⇒智行とは「智恵と修行、智識と徳行」。仕事においては、常に技術を学び、また頭で考えるだけでなく、実際に行動に移し、成果を実現すること
一、剣膽琴心(けんたんきんしん)
⇒武士道で云う“武徳合一(文武両道)”に秀でることの意。 常に「武人の傍には剣」があり「文人の傍には琴」がある。つまりは、「剣のように大胆〈膽〉、かつ、琴のように繊細な心を持ち併せる」ということ。中国、元の時代の呉莱〈ごらい〉という詩人の詩に由来。
行動指針
一、「巧詐は拙誠に如かず」 何事にも、“表だけをとり繕わず、誠を尽くす”
一、「継続は力」 努力を続ける習慣は、“真の技術力を身につける”
一、「耐えることは正義の一種」 忍耐は“本物の強さを生む”
一、「失敗に学ぶ」 失敗に学ぶことが出来れば、“その失敗は成功である”
一、「常に決意する」 人として、“愛情・威厳・正義をもって、失敗を恐れず決断する”